石山達也(東北大理)・今泉俊文(東北大理)・越谷 信(岩手大工)・杉戸信彦(名大院環)・堤 浩之(京都大理)・廣内大助(信州大教)・丸島直史(東北大理)(50音順)
第1報に続き,2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震(Mj 7.2)の震源域である岩手県一関市において,地震断層の有無を確かめるために,6月24日から7月2日まで,調査を実施した.その結果,既往の報告(産業技術総合研究所,2008;鈴木ほか,2008など)で指摘された地変を追認した.このほかに一関市本寺,磐井川と産女(うぶすめ)川合流点付近にて,特に西側隆起の変位を示すと考えられる地変と,これに関連する断層露頭などを見出した(図1)ので,以下に簡単に報告する.
一関市本寺,磐井川と産女川合流点付近(図2)では,取水賂に亀裂や短縮変形が認められた(図3).フェンスと手すりは水平短縮により湾曲しており,支柱のパイプがはずれている.また,取水路の側面は著しい座屈変形を被っている(図4).ここでは用水路の底と側壁の亀裂から,水平短縮量を20 cm程度,上下変位量を西上がり10cm程度と推定した.
図3にて圧縮変形がみられる取水路の西側,磐井川左岸では,ほぼ水平の新第三系凝灰質泥岩・砂岩を切る小断層が観察された(図5).ずれの量は非常に小さく,走向はおおむね北北東走向,約30°で北西に傾斜する.これらの地層は10°未満で東側に傾斜する. 同様な第三系凝灰岩類を切断する西傾斜の小断層群は,すでに地変が確認されている産女川右岸の段丘面と対岸の露頭でも確認される(図6).小断層群の近傍では比較的新鮮な小規模の崩壊が認められる.ただし,これらの小断層群と地変の関係は現時点では明らかではない.
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